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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)819号 判決

主文

原判決を次のように変更する。

被控訴人に対し、控訴人村田幸三は金九万壱千九百円及びこれに対する昭和二十三年十二月二十六日より支払済みに至るまで年五分の割合による金員を、控訴人山田徳治、同小島麟太郎は各自金四万五千九百五十円及びこれに対する昭和二十三年十二月二十六日より支払済みに至るまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払うべし。

被控訴人に対し、控訴人村田幸三は金四千弐百弐拾円を支払うべし。

訴訟費用(附帯控訴費用を含む)は、第一、二審とも全部控訴人等の負担とする。

この判決は被控訴人において、控訴人村田幸三に対し金参万円、控訴人山田徳治、同小島麟太郎に対しそれぞれ金弐万円の担保を供するときは、主文第二、三項につき仮に執行できる。

事実

控訴人等代理人は「原判決のうち、控訴人村田幸三の勝訴部分(主文第二項)を除き、その余を取消す。被控訴人の請求を棄却す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とす」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却す。附帯控訴にもとずき、原判決のうち被控訴人敗訴の部分(主文第二項)を取消す。控訴人村田幸三は被控訴人に対し金四千二百二十円を支払うべし」との判決を求め、控訴人村田幸三(附帯控訴人)代理人は「本件附帯控訴を棄却す」との判決を求めた。当事者双方の事実上の主張は、

被控訴代理人において、

本件自動車を売買した当時、被控訴人は修理と売買の仲介を業とし、控訴人村田幸三は運送を業としていた。

控訴人村田幸三の抗弁に対しては、被控訴人が控訴人村田から、櫟炭角俵百五俵、雑炭丸俵四五俵を受取つたことはあるが、それは訴外進栄舎に引渡すべきものとして受取り、当時その引渡をしたもので、本件自動車代金の代物弁済として受取つたものではない。又控訴人村田幸三から代金十万円の減額請求を受けたこともないし、被控訴人において茨城県価格査定委員会に、本件自動車の価格査定を求めたこともない。

附帯控訴の請求について、附帯控訴人は附帯被控訴人村田幸三に対し、原判決に摘示せられている自動車附属品代金四千二百二十円の支払を求めるものであつて、そのうちには修理代金二百円を含んでいるが、いずれも即時に支払を受ける約定のもので、しかも売買代金を請求している自動車の取引とは別個のものである。と述べ、

控訴人等代理人において、

控訴人村田幸三において、本件自動車の瑕疵を発見したのは、昭和二十四年二月二十日である。

本件自動車を売買した当時の控訴人村田幸三及び被控訴人の営業が被控訴人主張の如くなること。そして控訴人村田幸三が「大金」姓を名乗つていたことは認める。

なお、附帯控訴の請求に関する事実は否認する。

と述べた外は、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにその摘示を引用する。

(立証省略)

理由

控訴人村田幸三が昭和二十三年九月十七日被控訴人より、日産貨物自動車一輛を金二十五万円で買受けて、これが引渡を受け、その代金のうち金十五万円を即時支払い、同年十二月十二日に至り、残金十万円を同年十二月二十五日までに支払うことを約したことは、当事者間に争いがない。

そして控訴人山田徳治、同小島麟太郎が、控訴人村田幸三の前記債務につき同年十二月十二日保証したことは、成立に争いのない甲第一号証と、原審における証人斎藤与四郎の証言と被控訴本人の供述に徴し明かであつて、原審における控訴人山田徳治、原審及び当審における控訴人村田幸三(原審は第一回)の各本人訊問の結果のうち、右認定に副わない部分は採用できないし、その他の証拠によつても、右認定を動かし得ない。

しかも控訴人村田幸三が同年十二月三十一日、内金八千百円に対し、ソダをもつて代物弁済し、同日現在被控訴人に対し、金九万千九百円の代金債務を負担していたことは、当事者間に争いがない。

よつて控訴人等の代金減額の抗弁について判断するに、控訴人村田幸三は昭和二十四年二月二十日頃本件自動車につき、その主張の如き隠れたる瑕疵を発見し、直ちに被控訴人に通知して、商法第五二六条にもとずく代金減額の請求をしたと主張し、右控訴人及び被控訴人が、いずれも商人なることは当事者間に争いがないから、本件自動車の売買について、商法第五二六条の適用あることは明かであるけれども、民法の補充的規定に過ぎないから、その規定の趣旨も、民法の売買の規定にしたがつて解釈するを相当とし、民法の規定する売主の担保責任として、買主に代金減額の請求権を認めているのは、数量不足の場合に限られるから、商法第五二六条が売買の目的物に瑕疵ある場合にまで、代金減額請求権を認めたものとは解し得ない。したがつて本件自動車に瑕疵あることを原因として、代金減額の請求をしようとする控訴人等の抗弁は、すでにこの点において失当たるを免れない。

次に控訴人等は、仮に代金減額の請求が理由ないとしても、控訴人村田幸三は、昭和二十四年二月二日代物弁済として、被控訴人に櫟炭角俵百五俵、雑炭丸俵四十五俵を引渡したと主張するけれども、成立に争いのない乙第五号証のみによつては、この事実を認め得ないし、原審証人大金八郎の証言、原審及び当審における控訴人村田幸三の供述のうち、この点に関する部分は、原審証人小林進の証言に徴し、到底採用し難く、その他に代物弁済の事実を認めるに足る証拠はない。かえつて原審における証人小林進の証言と被控訴本人の供述を綜合すれば、水戸市における薪炭の指定配給登録店となつている有限会社進栄社が、昭和二十四年二月中賀美村農業協同組合から買入れた木炭三百俵のうち百五十俵を、控訴人村田幸三が貨物自動車に積んで、被控訴人方まで来たが、自動車がパンクしたため、その木炭を被控訴人方に預け、その後有限会社進栄社をして右木炭を引取らしめたもので、本件自動車代金とは何等関係がないことを認め得るから、控訴人等の前記抗弁も理由がない。

そうだとすれば、被控訴人に対し、控訴人村田幸三は自動車代金の残額金九万千九百円及びこれに対する弁済期の翌日なる昭和二十三年十二月二十六日から支払済みに至るまで、年五分の割合による遅延損害金を支払う義務あるものというべく、控訴人山田徳治、同小島麟太郎は、右債務の保証人として、各自平等の割合をもつて、その債務を弁済する義務あることが明かである。

更に附帯控訴の請求について判断するに、成立に争いのない甲第二号証と、原審における控訴人村田幸三、当審における被控訴人の各本人訊問の結果を綜合すれば、控訴人村田幸三は本件自動車の売買とは別個に、昭和二十三年九月二十九日から同年十二月八日までの間に、被控訴人より自動車附属品を買入れ、又自動車の修理を受け、その総額金四千二百二十円(内訳は甲第二号証記載の通り)となることが明かであつて、控訴人村田幸三の証拠によつても、右認定を動かし得ないから、被控訴人の附帯控訴の請求は、全部認容するを相当とする。

したがつて原判決とは一部符合しないことになるから、これを変更すべきものと認め、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九六条、第八九条、第九三条を、仮執行の宣言につき、同法第一九六条を各適用して、主文の通り判決する。(昭和二六年六月二九日東京高等裁判所第三民事部)

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